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会長の思い出63

 2015-11-01
2009年1月、父は病院に入院することになりました。
ガンが喉の奥の動脈を巻き込むようにできていたので、
手術ができず 緩和ケアしかないと言われました。

この後、半年で亡くなったのですが、この間 父の人生の全てが出たように思います。
人間 竹村 明の生きてきた 生き様を目の当たりにしたのでした。

1月に病状の説明を受けたのですが、本人は治るものだと思い込んでいました。
自分がこんな事で死ぬはずがないと思ったのでしょう。
そして、入院の時、共同部屋でいいと申しますので、
「個室の方が安心やし、それくらいのお金は何とかなる」と言ったのですが、
こういう時は自分の意思を曲げない人で、
「人がたくさんいる方が 賑やかでええで」と楽しそうに振る舞うのでした。
人には絶対迷惑をかけたくないという信念を押し通しました。

それは、無理してやっているのではなく、
長年培ったものが自然に出たという感じでした。
緩和ケアで入っている人ばかりの部屋ですから、
大きな声をあげている人や、呻いている人、
そして人の出入りの多い所でしたので、大変だったと思うのですが、
若い時に上野の公園で半年野宿をしたことがあるから
何処ででも寝れるとよく言っていましたから、平気なのかなとも思いましたが、
自分の言ってきたことを最後に表現したかったのかもわかりません。

物がほとんど食べれなくなっていましたから、
どんどん痩せ細ったのですが、最初はいたって元気でした。
病院の中を走り回ったり、抜け出して散歩に行ったり、家に帰っていたり。
だいたい じっとしている事が好きではなかったですから、
ナースステーションでよく遊んだりもしていました。
すると持ち前の明るさと人懐っこさで、病院のスタッフの方の中で人気者になっていました。

2月、私と弟が呼ばれ、山陰のカニツアーに一緒に行こうと言い出しました。
1泊のバスツアーでしたが、この頃もだいぶしんどかったと思うのですが、
最後に私と弟と3人で行きたかったのと、兄弟仲良くという意味もあったと思います。
父はもうほとんど喋れなかったですから、何も話しすることもなく、
カニを食べるわけでもなく、只3人で一緒にいて、
私と弟の話を聞いているだけでした。
でも、それだけで楽しそうで、暗に兄弟二人、
この事を忘れるなよと言っているような気がしました。

あと思い出すのは、母のことを思い出した時と、
突然何かに感動した時に、泣いていた事です。
緩和ケアの痛みどめで、意識が朦朧とする中でしたが、
「美智子、何で死んだんや」と言って何度も泣いていました。
30年以上前に亡くなったのに、ついこの間の事のように思い出していました。
母が亡くなって以来、子供につらい思いをさせたくないからと
再婚は絶対にしませんでした。
本当に、妻と息子二人だけを愛したんだなあと感じさせられました。

それと、最後に父の発した言葉は「五」でした。
意識のなくなる前日に、片方の手のひらを開いて、「五」「五」と何度も言ったのです。
その時 意味がわからなかったのですが、あとから、
会社で掛けていた死亡保険金が5000万円出ることが分かったのでした。
会社は資金繰りは回るようになっていましたが、
未だ余裕のあるわけではなかったのです。
父は保険など嫌いで、こんな事忘れていそうな人だったのですが、
ちゃんと息子には伝えておこうと思ったのでしょうか・・・。

最後の最後まで、家族と会社の事を愛し、商売や仕事にはお金をズバッと使うが、
自分の事では贅沢をせず、義理と人情には厚いが、曲がったことは大嫌いな、
自分の生き方に信念を貫いた、私にとって偉大な人物が 6月8日に亡くなりました。

病気が辛くて体が震えているのに、じっと我慢して何も言わず
耐えていた姿を今も忘れられません。
私は、父と同じような状況に置かれた時に、父のように誰にも甘えず、
迷惑かけずにやれるかと思うと 自信がありません。
だた、事あるごとに 強く生きた父の事を思い出して頑張っていきたいと考えています。
暑い寒いを絶対言わず、絶えず何かに挑戦し続けた男の生き様を見続けた半年でした。
いや、私にとって半世紀が終わったのでした。
 
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